唐人物語(シャメンのうた)-原由子(らゆうこ)
唐人物語- 原由子
名もないこの街に
在這無名的街道上
異國の陽がのぼる
異國他鄉的太陽升起
乙女は悲しみを
少女將悲傷
禦國のためと知る
寄託給她的國家
春はまだ夜は長く
春夜方長
鐘鳴る了仙寺
了仙寺幾度鐘鳴
運命と泣くも良し
命運與哭泣都有情可原
儚き世の情け
在這虛幻無常的世間
下田港を訪れた黒船が
來訪下田港的黑船
沖遙か彼方に揺れ
向著遙遠的彼方徐徐搖晃
駕篭で行くのは
乘轎前去
時代に翻弄ばれた
卻被時代所翻弄
眉目清か
那眉清目秀
麗しい女性
花容月貌的女性
桜見頃の唐人坂で
在櫻花盛開之際的唐人坂
巡る想いは
盤旋縈繞的思念
ひとりひとり
在每一人的心頭
泣けば花散る一輪挿しの
枝枝花朵隨著悲泣散落
艶な姿は春の宵
美麗的身姿正如這春天的夜晚
月冴え照る道に
月華澄淨映照的小徑上
椿の濡れまつ毛
山茶花打濕了睫毛
世を捨て世に追われ
一度遺世又被世間追趕
旅立つ稲生沢
於稻生澤啟程
明けの烏と謡われしことは
被歌頌為黎明之鳥的
今遙か昔の夢
是如今早已遠去的舊夢
死ぬは易くて
感嘆死之容易
生きるは難しと
生之艱難
三味の音に託せし女性
將這思緒託付給三味線的琴音
石や礫でラシャメン結いに
用石簪挽起唐人髷
後ろ指さす
被人在背後指指點點
ひとりひとり
每個人
戀の涙と雨降る中を
在為戀情落下的淚雨之中
己が愛した男性は去く
心愛的男人從此遠去
桜見頃の唐人坂で
櫻花盛開之際的唐人坂上
巡る想いは
盤旋縈繞的思念
ひとりひとり
在每一人的心頭
泣けば花散る一輪挿しの
枝枝花朵隨著悲泣散落
艶な姿は春の宵
美麗的身姿正如這春天的夜晚
春の宵
春宵苦短
桜舞い
櫻花飛舞