想春夢
雪解けの庭をふと見れば【積雪初融庭院之中】
小さき蕾の白き薔薇【似雪白玫含苞待放】
其(そ)はまるで読みし戯作(ほん)にある【彷如一部未盡之書】
戀を知らぬ心のよう【如若一顆無愛之心】
人は誰(だれ)もが誰(た)がことを【滿腹疑惑問於世人】
戀(こ)うるものなのだろうか? 【滿腹疑惑問於世人? 】
陽の光求む花の如くに【正如花兒性喜向陽】
春まだ遙かに見ゆるけれど【陽春尚遠遙不可及】
幽(かす)かに流るる花信風(あまきかぜ)の薫りよ【清風拂面幽香撲鼻】
虛(むな)し現世(うつしよ)にも春は來たり【虛空現世春景仍現】
すべてが玉響(たまゆら)だとしても【縱然萬物這般無常】
何処かで春告鳥(うぐいす)が啼(な)いてる【鶯語婉轉何處報春】
此の世には特に愛(め)でるべき【吾之所愛世間無存】
ものは無しと思うけれど【曾幾何時固執己見】
いつの日かこんな心持ち【有朝一日此般心境】
変わる時がありやなしや【不知可否有所變化】
人はいつか誰(た)がことを【滿腹疑惑問於世人】
思うものなのだろうか? 【何時對誰心懷思念? 】
此の醒めた心抱いて生きても【即便心中了無牽掛】
春まだかそけき気配(けはい)なれど【陽春尚遠春意渺茫】
氷が溶けゆくあの川のせせらぎ【河川冰融水流淙淙】
うつりにけりな亦(また)春は來たり【斗轉星移春光復來】
すべてが泡沫(うたかた)だとしても【縱然萬物這般飄渺】
たゆたう蝶は空に踴る【破蛹之蝶漫天飛舞】
人は誰(だれ)もが誰(た)がことを【滿腹疑惑問於世人】
戀(こ)うるものなのだろうか? 【可曾對誰心生傾慕? 】
分かりえぬ其れは夢のまた夢【不得其解夢中之夢】
春まだ遙かに見ゆるけれど【陽春尚遠遙不可及】
幽(かす)かに流るる花信風(あまきかぜ)の薫りよ【清風拂面幽香撲鼻】
虛(むな)し現世(うつしよ)にも春は來たり【虛空現世春景仍現】
すべてが玉響(たまゆら)だとしても【縱然萬物這般無常】
何処かで春告鳥(うぐいす)が啼いてる【鶯語婉轉何處報春】