短篇小説
ささやかな嘘があなたから滲む
季節の替り目にふとこぼれたのですね
思い出の中はあたたかいですか
私はその人によく似ているのですか
短篇小説の始まりの様に
ガラス細工の言葉で
明日という文字をあなたの背中に
いつもつづっていたのに
積木細工みたいにつぎだらけの愛
思いあがりですか 幸福と名づけるには
閉じて下さいできることなら
心の古地図と思い出の中の人
短篇小説のおしまいの様に
ふいにつき落とさないで
お願いあなたを思い出の人に
どうぞしないで下さい
どうぞしないで下さい