焔消えず
おい、俺の眼を見ろ!
俺たち新選組を甘く見るな、この眼を見ろ。
この眼はな、熱い血の通った人間の眼。
そして侍の眼(まなこ)だ。
骨の髄まで鬼であるおまえには
俺の眼の奥にある焔(ほむら)の意味など、
わからねえだろう。
この燃え盛る炎こそ、
人としての誇り、
武士としての信義だ。
たとえ羅刹に変わろうが、
討ち死にして果てようが
この火は消えずに、
のちの世まで残り続けるんだ。
俺たちはな、
ただ己(おのれ)のために生まれて生きてるんじゃねえ。
守るべきもののために、
遠い明日のために
この時代に生まれて此処に居るんだ。
ふっ、鬼火?
笑わせるんじゃねえ。
この炎はな、
たとえ汚濁にまみれても消えねえ信念の炎だ。
この魂の火が、俺の生きかたを決めた。
そして、同じ眼を持つ同志たちを引き寄せたんだ。
俺たちを笑いたきゃ、いくらでも笑うがいい。
だがな、俺も容赦はしねえ。
人間には確かに、人間としての弱さがある。
それは限りある命を持つ者、
心を持つ者の宿命だろう。
だが、だからこそ、人には燃え盛る意思がある。
たとえどんなに短き生であっても、
俺はこの焔(ほむら)とともに生きる。
激動の世に生まれ、
敵であるおまえと出会ったのも宿命って奴なんだろう。
俺をどうしたい?
俺を斬るか?
それとも斬られるか?
とうに俺には覚悟が出来ている。
時が来たら、人は散るもんだ。
命の火は消え去るだろう。
この、強き志、
おまえには理解しがたい燃え滾(たぎ)る炎を残してな。
今夜は新月だ。
暗黒の空に、一筋、鋭き爪あとのような月。
こんな夜には、狂気が蠢(うごめ)く。
だがな、おまえらの思うままにはさせねえ。
闘いはな、最期まで諦めねえ奴が勝つんだ。
極限のギリギリ、その最期の瞬間までだ。
もしも、天が俺たちの見方をしねえとしても、
向かい風の中を俺たちは斬り込んで行くだろうよ。
潔いってのは、諦めることじゃねえ。
覚悟をきっちり決めるってことだ。
時代さえも、俺たちを裁くことなんてできやしねえ。
不適に笑っていられるのも今のうちだ。
おまえなんかに俺たちをただの人間だなどと笑う資格はねえ。
おまえの足元に、いずれ、めらめらと真っ赤な火が近づいて来て
まわって行くだろう。
俺が、決着をつけてやる。
さあ、眼をそらさずに俺の眼を見ろ!
俺たち新選組を甘く見るな、この眼を見ろ。
この眼はな、熱い血の通った人間の眼。
泥を飲んでも這い上がり、
前だけを見据えて生きる侍の眼(まなこ)だ。
眼をそらすな。俺の眼を、見ろ。