ブリキのロビー
「カチカチ。」って音が鳴った、鉄製の奧深くで。
「素敵ね、錆付かなけりゃどんなに幸せな事か。」
廻らないねじの裏、油が乾いたように。
誰もいない観覧車に忘れられたのか。
四角い継ぎ接ぎのパアツが埃で曇る。
必要とされていた事がもうわかんないや。
扉が「みしみし。」と音を鳴らすのが怖い。
夜になれば電気も無い。
星空の中。
ギラギラギラ、ブリキの僕。
端っこから、色褪せてく。
錆びてきてるアンテナから。
聞こえない歌がルララ。
ギラギラギラ、ブリキの僕。
ふたりだけのかくれんぼさ。
夢を見たいから眠ろう。
鉄屑だらけのユウトピア。
らー、らー、らー、らー。
らー、らー、らー、らー。
らー、らー、らー、らー。
らー、らー、らー、らー。
メリイゴオランドのお馬さんが噂する、
あの子が死んでしまったという悪い話。
歳を取り、家族に囲まれ病院の部屋。
微笑みながら死んだから、辛くはないさ。
ギラギラギラ、ブリキの僕。
忘れさられ、色褪せてく。
あの子と同じように死にたいなんて考えるの。
ギラギラギラ、ブリキの僕。
ふたりだけのかくれんぼは、
そろそろ終わりにしてもいいんだって思えば終わりだ。
ギラギラギラ、ブリキの僕。
いよいよだね、色褪せたよ。
錆びてしまい動かない頭両手両足には、
あの子を守るための武器、
ペンで書いた下の名前。
また會いたいと願いましょう、
思い出とここに眠る。
おわり