噓
“愛しい女(ひと)よ”の文字を讀み返し束ねた戀文(こいだより)
炎に包んで舍てる夢の終わりだと
離ればなれの暮らしは時を枯らしてゆくだけね
五年の歲月あなたはさよならで結んだ
淋しさに淚ぐみひとりで想い拙き筆をとる
冬枯れのことばが霞むたびにあなたを想い出す
インクが滲んだ後の便箋はいつでも悔むだけ
追伸ばかりで別に手紙が出來るほど
想い出にほつれてる一條(ひとすじ)の發を忍ばせ封をする
ことばにならない一言と氣づいて欲しくて……
“拜啟春の風に誘われて
枝には花が滿ち
私の心も華やぐ季節
幸せにしています。”