言葉
電話の聲はささやきまじり
ごめん起こしてしまったんだね
いま他愛ないやりとりのあと
ぼくは一言闇に浮かべた
“愛してる”
月並みすぎる一言だけど
他にどうにも言い方がない
靜けさのあと驚く君が
時を兩手でもて餘してる
“愛してる”
そう三ヶ月惱んで來たよ
そして最後の三日は苦しみ
心の奧の暗い迷路で
たった五文字の道しるべ見た
“愛してる”
君は未來をこわがっているし
ぼくは過去へと縛られている
こんな何處にも轉がっている
言葉が一番重いんだなんて
“愛してる”
預かっとくってそう言うんだね
ぼくの言葉を鳥カゴに入れちまって
そうさ君の部屋のガラス箱に入れて
ゆっくりながめて見るんだね
“愛してる”
こわい言葉を言ってしまった
もう友だちで居られないんだよ
人生さえも塗り替えるほど
こわい言葉を言ってしまった
“愛してる”