ミルク
街道沿いの秋風に
パラパラと散らばっていた
色の葉に呼ばれるように
記憶の世界が開いた
夢ばかりを追いかけて
誇らしげに話す僕を
嬉しそうに見つめながら
ティーカップを両手で持っていた
「好きだよ」
そんな風に 僕らは 笑っていた…
置いてあるだけの看板も
時が止まったままの時計も
君の顔が浮かんで来るよ
いつも聞いていた君の声が
ましな顔して僕も居るかな
君に逢って何を話そうかな
僕の大切な君のこと
もっともっと話したかった
ちゃんと伝えておけば良かった
大学の道に敷き詰まった
鮮やかな落葉樹の葉
拾い上げた指先に 君の涙が落ちた
「ゴメンね」と溢れたように聞こえた
最後に 多分 そう聞こえた
傷だらけの古いテーブルも
まるで無関心そうな猫も
出来上がった名もないサウンド
意味などない言葉並べて
片っぽずつイヤフォンで聴いた
君にだけ 渡したかった歌
戻れないよ 君は居ないよ
僕にも もう 違う僕があるから
君が知っている僕じゃないから
苦いコーヒーと焼けたトーストの香り
パリンと割れたみたいな思い出と
この先 何処までも歩いては行けないよな
仲間の夢を乗せていたフライヤー
白髪頭の静かなマスター
不意打ちみたいによみがえる
サヨナラのまま止まった景色
忘れたよ なのに 涙が出た
ミルクが僕を僕に戻した
君と僕は もう 居ないから
今の僕がここにあるんだ
ラララ...
僕らは きっと これで良かったんだ