砂人の歌
もう一度夜が明けたら
遠い星の話をしよう
揺らめく陽炎の向こうに
伝説は息づいている
そこは、
草木が生い茂り
滾々と清水が湧き
黃金の光が満ち
妙なる果実が生るという―
道標などは在りはしない
ただ、追い縋る
どこまでも遠く高きはその輝き。
星の砕けて零れ落ち
降り注ぐ屍骸の果てを
我等は大地と呼んでいるのだ
生まれて地に還る定めなら
いつかその身も星と共に全て帰りゆくのだ
…辿り著くまで。
ただざくざくざくと、冷たい星を、
踏みしめながら。
何処までも。
何の罪を背負うわけでもなく
何の咎に責められたでもなく
罰にも似た過酷な旅路を
砂漠を往く砂人と稱し
けして凍てつかぬ様に、と。
けして燃えつきぬ様に、と。
未だ果てることを知らないまま進み往く。
爪弾き、かき鳴らし、奏でよ。
唄われるべくは
我等が辿るまだ見ぬ明日の歴史
―かく語りては、
―かく伝え、
―かく歌え。
いつしか忘れ、
流浪の民となって終わぬように
揺らめく陽炎の向こうへと
祈りの歌を我等の名とともに響かせるのだ
求めても得られぬ神の名より
悠かなる地に
我等はこの名を刻んでみせよう
大地はどこまでも果てしなく
伝説は未だ、その身を穢れなき伝説のままに
…辿り著くまで。
ただざくざくざくと、冷たい星を、
踏みしめながら。
何処までも。