武満徹:「系図」より むかしむかし
1 むかしむかし
第一樂章:很久以前
(語り)
(念白)
むかしむかし、わたしがいた
很久以前,我出生了
すっぱだかで目をきょろきょろさせていた
我一絲不掛地東張西望著——
いまの太陽と同じ太陽が青空の真ん中でぎらついていて
那時的太陽是今天的太陽,在藍天之上閃爍著
いまの風と同じ風が草の上をあっと吹いてきた
那時的清風是今天的清風,從草原吹拂而過
學校はなかったけれど私はいた
沒有學校,我也生活著
おもちゃはなかったけれど遊んだ
沒有玩具,我也玩耍著
本はなかったけれど考えた
沒有書,我也思考著
ハンバーグはなかったけれどうんちをした
沒有漢堡,我也生長著
寂しくなるどなぜか分からずに泣いた
寂寞的時候,不知為何也會流淚
可笑しいときはなにもわからずに笑った
看到滑稽的事,不知為何也會露出笑容
お腹にあるおへそが不思議で
我對肚臍感到不可思議
いつも指で觸りながら眠った
一直以來睡覺的時候都摸著它
そして夢の中では蛇の雨か降り
所以在夢中,天上降下蛇之雨
私は生まれたり死んだりした
我出生又死亡,周而復始
むかしむかしどこかにわたしがいた
很久很久以前,我在這世界上的某處
今ここに私はいる。
現在,我在這裡。