吾輩は貓である
吾輩は貓である
我是貓
夏目漱石
夏目漱石
吾輩(わがはい)は貓である。名前はまだ無い。
我是貓。名字暫且沒有。
どこで生れたかとんと見當(けんとう)がつかぬ。
完全猜不出在哪裡出生。
何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
只記得在一個陰暗潮濕的地方喵喵叫著哭著。
吾輩はここで始めて人間というものを見た。
我在這裡第一次遇見稱為人類的生物。
しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪(どうあく)な種族であったそうだ。
而且後來聽說這叫做書生,是人類中最猙獰兇惡的種族。
この書生というのは時々我々を捕(つかま)えて煮(に)て食うという話である。
據說這種書生有時候會捕捉我們,然後煮著吃。
しかしその當時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。
但是那時候並沒有任何想法,並沒有感到恐懼。
ただ彼の掌(てのひら)に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。
只是被放在他的手掌舉起來的時候,不知道為什麼只有輕飄飄的感覺。
掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始(みはじめ)であろう。
在手掌上稍微冷靜下來,這時看到的書生的臉就是第一次看到的人類的臉。
この時妙なものだと思った感じが今でも殘っている。
那時候奇妙的感覺至今仍留在腦海。
第一毛をもって裝飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶(やかん)だ。
本應有毛裝飾的臉光滑光滑的,可以說像水壺一樣。