アクアリウム・ゴーストソング (monochrome ver.)
大きな箱の、
小さな海の、
銀の魚の群れに紛れて
聲が聞こえた。
聲が聞こえた。
僕だけのマボロシ
流れは風になって、
長い髪を揺らす。
何処かで出逢った事が
あるような
ないような
大きな箱の、
小さな海の、
ショーケースの中の少女が
僕を見つめる。
僕を見つめる。
何かを伝えようと
冷たいガラス越しにその手に觸れる度
失くした思い出、
ぷかり、
泡になり浮かんだ。
記憶の海へと、
僕は落ちていく。
アクアリウムに住むマボロシと融け合って
あるべき場所へと、
還るのでしょう
涙は、
水に溶けた。
水槽の中の、
小さな君に、
會いにくるのも何度目だろうか
僕はずいぶん昔の事を思い出していたよ。
君と出逢った春の生溫い風とか
君がいなくなった日の百合の花の香り
記憶の海へと、
僕は落ちていく。
境界線、
ガラスもおぼろげになっていく。
近くにそちらへ逝くのでしょう
その手に引かれるまま。
記憶の海へと、
僕は落ちていく。
アクアリウムに住むマボロシと融け合って
あるべき場所へと、還りましょう。
涙は、海に溶けた。